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第1回
「雪かきと健康:安全対策」
カレスサッポロ北光記念クリニック所長 佐久間 一郎
(2014.12.28)
冬期間、戸外での運動がなかなかできない北海道では、雪かきは必要に迫られて行うという面がありますが、良い運動になります。しかし、運動の性質からいうと、足腰や筋肉だけではなく、以下のような点で「かなり心臓に負担のかかる運動」と言えます。
1. 腕の運動は脚の運動よりも心臓に対する運動効率が低いこと
2. 立ちずくめの作業であること
3. 動的ではなく、静的な状態で筋力の発揮が必要なこと
4. 雪を持ち上げる時に息を止めることで胸腔内圧が上昇し、
血圧が急上昇すること
5. 寒冷にさらされた状態ですること
従って、今まで心臓の症状がなかった方が、初雪後に雪かきを行った際に初めて胸の圧迫感・胸痛を感じ、休むとそれが直るという症状が出現することがあります。これは天皇陛下が罹られた「労作性狭心症」(心臓の筋肉に栄養を送る「冠動脈」の内側にコレステロールが貯まり、「冠動脈」を細めて血流が流れにくくなった状態で、心臓に負荷をかけると虚血により胸痛が出て、休むと戻る)の症状です。
以前から、階段を昇ったり、重い荷物を持って歩いたりしたときに同様な症状があり、「労作性狭心症」として診断・治療を受けておられる方は、慢性の「狭心症」で心臓もその状態に慣れており、あまり問題はありません。しかし、初めて「狭心症」の症状が出た場合は「不安定狭心症」と呼ばれ、3か月以内に「急性心筋梗塞」「心臓突然死」を起こすことが多いので、直ちに循環器専門病院で検査を受ける必要があります。
北海道では雪かきにより、初めて「狭心症」が見つかる場合が多く、私も毎年10名ほど経験します。その際には「不安定狭心症」として、運動負荷検査をせずに、冠動脈CTなど、特別な検査を行って診断を決定します。初めて「狭心症」を自覚した場合は、そのような設備を有する循環器専門病院を急いで受診して下さい。
逆に、すでに「狭心症」「心筋梗塞」「心不全」などの心疾患をお持ちの方でも、また一般の健康な方、高齢者でも、雪かきは「安全対策」を行なった状態ですれば、良い運動になります。心機能・運動能力を高めるためには「通常の心拍数+30拍」ほどの有酸素運動を一日30分、週3~4回以上すればOKです。寒さ対策を万全にした上で、無理のない「ややきつい」程度の状態で雪かきを行うことが薦められます。